ちぐさ文学館

場面
京堂家の滅亡 [ 12-8 〜 12-10 ]

<29>京堂家の滅亡
『姦の血脈』 <<前へ 次へ>>
 夜半、恭介は錯乱した琴に眠りを破られる。佳彦の寝室から芙美子の悲鳴を聞きつけて瑛子が二階に登っていったのち、ほどなく新たな悲鳴と物音が響いてきたというのだ。起きだした女中たちがうろたえてたむろする階段の上り口に恭介が駆けつけたとき、二階の寝室からまろび出てきた瑛子が階段に姿を現す。踊り場まで降りて助けを求める瑛子は、日本刀を手にして追いすがる佳彦に背後から斬りつけられ、鮮血を散らして階下に転落する。追い打ちをかけるように階下に降りた佳彦は、激しい憎悪をたぎらせて恭介に詰め寄る。激昂して刀を振りかぶった佳彦に対して、恭介は男爵の遺品の拳銃を構えて、立て続けに弾丸を撃ちこんだ。昏倒して息絶えた佳彦に続くように、深手を負った瑛子もまた恭介の腕の中で事切れる。二階の寝室では、全裸を大の字に拡げて床柱に立ち縛りにされた芙美子が、左胸と股間を刀で抉られておびただしい流血を見せながら息絶えていた。お嬢さまを責め問いながら遂に真相を聞き出した佳彦は、折しも様子を見に現れた瑛子の姿にさらに逆上して、姦通を犯した婚約者に死の制裁を加えたのだった。こうして京堂家の血筋は一夜にして滅び、あとには牢屋敷の後始末を委ねられた忠実な執事としての恭介だけが残された。
 
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ちぐさ文学館 - 姦の血脈 - <29>京堂家の滅亡
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