トシ江を救いに乗り込んできた黒薔薇団首領・桜町アヤの手にした西洋風仕込み杖によって数人の若衆が倒されたことを聞いた竜二郎は、桜町アヤがかつて手籠めにした桜町子爵令嬢・綾子にほかならないことを確信する。奇妙に静まりかえった土蔵の中では、和解が成って対峙している綾子と安吉の間で、トシ江が凌辱され尽くした体にボロボロのセーラー服をまとっているところであった。かつての桜町子爵家の書生で今は皇道派右翼団体「赫心会」を率いてテロ活動に跳躍している極右の土井赫心の後ろ盾を得た綾子は、全身を黒衣に固め強烈な化粧をほどこして、鋭くも妖艶な美貌を身につけていた。周囲を圧しつつ立ち去ろうとする綾子の前に竜二郎が立ちふさがると、綾子は思いがけぬ男との再会に驚愕しつつも屈辱の記憶を思い起こして瞋恚に燃え上がる。綾子は竜二郎の女衒生業を激しく罵倒しながら表通りに停めた車へと戻り、奇遇にも今は赫心の部下となっていた運転手の寺田の前で、昔日の強姦の雪辱のため竜二郎に決闘を申し込む。竜二郎に決闘を承諾させた驕慢な女剣士は、どよめく人だかりを一顧だにせず走り去った。 |
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