伸々塾のスキャンダルを種に再度の会談を求める岩倉からの書状が香枝のもとに届いた。すでに自分の凌辱写真までもが恭平を通じて岩倉に渡っていることも知らず、絶体絶命の窮地をなんとか収拾しようと苦悩する香枝の姿に、恭平は自嘲まじりの愛執を拭い去ることができなかった。
旅館に呼び出された香枝は風呂上がりの岩倉に迎えられ酒肴を振る舞われる。焦れて用件を切り出した香枝に対して岩倉が語ったのは、恭平、英子、奈保子をめぐる醜聞の完全に正確な情報であった。奈保子の凌辱写真さえもが証拠として岩倉の手に渡っていることを知らされて呆然とする香枝に、岩倉は香枝自身の決定的なスキャンダルさえも握っていることをほのめかす。それは秀英セミナーによる合併にあらがい続けてきた美人塾長が、巧妙に張りめぐらされた罠に完全に捕らわれて、もはや逃れることのかなわぬ汚辱の入口に立たされた瞬間であった。