その後数日、淳は強さの度を増した異界からの影響力に操られるままに都内の高級地を徘徊した。新宿西口のホテルC・Hに足を向けた淳は、むさ苦しい恰好で同じ場所に現れた佐々木と出会って、新たな女との遭遇を予感する。そのときホテルのロビーに颯爽と現れたスーツ姿の美女が、その容貌を眼にした二人に例の衝撃をもたらして、次の生贄を指示した。頭の中に直接送り込まれる不可思議なメッセージにより、その女を映画女優出身の三十八歳の衆議院議員・山之内詠子と知った二人は、ロビーから人目を避けるようにして階上へ向かう詠子の後を追ってエレベーターに乗り込む。すぐ後をついてくる男たちに不審と疑惑をつのらせながら、情事のため八〇八号室に向かった詠子は、ドアの前で立ちふさがった淳の眼力に射すくめられて、なすがままに部屋の鍵を手渡す。