【一日目】高校一年のときに孤児となって父の親友に引き取られた少年・倫也は、有能な書生として主家の雑事を完璧にこなすいっぽう、暗い光を底にたたえた物憂げな瞳と浅黒い美貌とで周囲の女たちの賛嘆と畏怖を集めていた。主家のひとり娘で三つ年下の高慢な美少女・美奈だけが倫也に遠慮なく当たり、忍従する年上の青年を召使いとして使役する。主従の関係が三年に及ぶなか、思春期の勝気な娘は自分の部屋を倫也に掃除させ下着まで洗濯させては、支配者の残酷な喜びに戦慄をおぼえるようになっていた。高校生になって乗馬をたしなんでいた美奈は、あるとき偶然にもぶざまな落馬の瞬間を倫也に見られて恥辱に逆上する。怒りに絶叫して振るった美少女の鞭に顔を切り裂かれて血を噴いた倫也は、ただ一瞬だけその眼の底に鋭い光を宿らせる。
五年後、驕慢な令嬢となった美奈と忠実な書生の倫也との、女王と奴隷の関係はまだ続いていた。気ままな遊行に旅立つ美奈を空港へ送るために車で迎えに出た倫也は、胸中に秘めたある計画を押し隠しつつ自分の家に車を立ち寄らせる。暇つぶしと称して美奈が招き入れられたコンクリートの地下室には、道也が収集した鞭のコレクションが壁に吊られて並んでいた。鋭い素振りで鞭の味を吟味した美奈は、しかし、部屋を出ようとするのに倫也が従わず扉に鍵さえかかっていることを知って激昂する。無言で立ちつくす不服従な奴隷に鞭を振り下ろして、激しく打ちのめしていく驕慢な女王。顔を血にまみれさせて転げまわる倫也は、暗い恍惚感とともに、五年前と同じ光を瞳に宿らせ始めていた。