宏造に見せられた白藤登志子の裸体によって、亡き母が凌辱される淫靡な光景が乙哉の脳裡に甦る。父が狂死した後のある夜、十歳の乙哉が目撃したのは、仇の宏造によって全裸で床柱に縛られて玩弄され、怒張に口を使わされ、犯されて絶頂を極める若い母の無惨な姿だったのだ。倒錯の性に目覚めた乙哉は素性を隠して万福屋に就職し、いまやその身中の虫となって復讐計画をめぐらしているのだった。
深夜、乙哉の部屋にかかってきた電話は、行きつけの高級バー「ミシェル」で酔いつぶれた、宏造の愛娘でファッションモデルのひろみからの呼び出しであった。社長令嬢の無理な要求を拒むこともできずに「ミシェル」へ赴いた乙哉は、宏造の愛人でもある美人ママからひろみを引き渡されて自宅まで送り届ける。だが、泥酔の情態を侮蔑され誘惑を拒絶されたと感じて乙哉を憎むひろみ。いっぽう乙哉は、出迎えた宏造の後妻・志津子の楚々とした美しさに心を奪われる。翌日、ひろみの中傷のせいで宏造から問責された乙哉は憤懣をつのらせつつ、前日の痴態に恥じ入る登志子の姿に欲望を高める。