マリはきっとそむけた顔の唇を噛みしめて羞じらいに耐えている。
錦城市郊外の温泉郷に構えられた「せせらぎ荘」を借り切って、「清鳴会」の金に飽いた男たち五人による、お互いの奴隷の品評会が始まる。座敷の鴨居にパンティ一枚の後ろ手縛りを並べて吊られたのは、十八歳の女子大生かず子、三十歳の人妻里枝、十五歳の芸子見習い三千代、二十二歳のモデルのマリ、そして白藤登志子。女たちは好色な男たちの野次を浴びながら一人ずつパンティを剥がれ屈辱の自己紹介を強いられる。司会としてのその一部始終を実行させられる乙哉は、あまりの恥辱に顫えながら泣きじゃくる登志子への哀れみを募らせ、宏造への報復を内心で誓った。拒絶の素振りを見せたために尻を鞭打たれてパンティを剥がれたかず子と三千代には、さらに後ろ手をあぐら縛りにされて開いた股間をさらけ出し服従の言葉を口にさせられる恥辱の儀式が課せられる。宏造は三千代を見る情欲の眼差しの中に、妻の連れ子の、三千代と同年代の下の娘に対する父娘相姦の欲情を剥き出しにしていた。卑猥な品定めの時間が女たちの羞恥の泣き声の中に果てると、欲情にぎらつく五人の老人たちは、全裸で部屋に連れ戻した女たちを交換する乱淫の夜にふけっていく。座敷に一人残って夜を過ごす乙哉の脳裡からは中学卒業と同時に老人の妾にされたという三千代の稚い裸像が離れず、淫靡な妄想は宏造の後妻・志津子の連れ子である高校生の娘までをも復讐の対象にする遠大な計画へと発展していく。
身悶えるようにゆさぶる肩から浴衣が滑り落ち、双のふくらみがあらわになって乙哉の眼の前で弾んだ。
出品奴隷のひとりだったモデルのマリは、ひろみの取り巻きの一人であった。乙哉の口から破廉恥な行状がひろみに洩れるのを怖れて、夜半乙哉のもとに忍んできたマリは口封じのため乙哉に情交を許す。乙哉の腰にまたがって逞しい突き上げにのたうったマリは、乙哉のあぐらの上で激しい絶頂を極める。乙哉はひろみのレズ相手でもあったマリの口から、ひろみが男嫌いでまだ処女であることを知る。翌朝、他の男にひと晩じゅう嬲り尽くされた自分たちの奴隷と混浴を楽しんだ後で、月例会は果てた。
相姦の欲望を秘めた宏造、男嫌いのひろみ、娼婦に堕ちた登志子、眉子の怨念、そして狙われる罪なき母娘。秘書として垣間見ることになった数多の秘密が、大貫家の秩序の混沌への融解を、乙哉に予感させていた。