富山湾の海底に抱かれた都市国家では、核戦争による放射能汚染で地上を追われた日本国民の最後の四十万人が生き延びる停滞した閉鎖社会が営まれていた。世代を追うごとに生殖能力の減衰が著しい海底都市では、厳格な貴族制のもとで生殖の管理がおこなわれ、生殖能力を有する「有能者」とされた子女は十六歳の成人と同時に国家の指導のもとで性交技術の手ほどきを受けなければならないのだった。海底都市の最高権力者である黒人の「総統」は貴族階級のための学習院高等部の卒業式に出席し、そこで卒業生代表として答辞を読む美少女・富士涼子に魅せられる。涼子は反政府的な姿勢をとる貴族・富士義則の娘であった。卒業式ののち、祝宴にはしゃぐ娘を見守る母の富士節子は、涼子に向けられていた総統と秘密警察長官・辰巳徳丸の視線に不穏なものを感じながら、こののち愛娘を待つ「成人検査」の恥辱を思ってひそかに悲嘆に暮れていた。