逆さ磔にされていたのは旗本・立花十郎兵衛とその妻の留女であった。十日ほどのち、十郎兵衛の盟友であった三人の旗本が顔を揃える。十郎兵衛の妹・千草を息子の妻に迎えようとする赤星内膳、内膳の長女・志津を娶った土岐兵馬、次女・綾との婚礼を前にした水野右近である。十郎兵衛への仕打ちが、さきの島原の役において彼らが一揆軍の女たちに為した非道な凌辱への復讐と推した内膳らは、廻船問屋の堺屋久兵衛とともに対策を話し合う。だが女遊びに狂う土岐兵馬は妻・志津に迫っているかもしれぬ危険も顧みず、仲間(ちゅうげん)の権平を残して去る。そして権平の前に現れた姦鬼もまた志津を狙っていた。