旬日後に執り行われた水野右近と内膳の末娘綾との婚礼は、夜更けてようやく果てた。十六歳の花嫁は初夜の床に横たえられて生まれて初めての男の愛撫に羞じらい悶える。その時ふいに座敷に侵入してきた五人の黒覆面の男たちは切支丹の残党「逆くるす党」と名乗った。抵抗もむなしく縛り上げられて、立花十郎兵衛の妻を襲った運命に思い至って慄然とする右近。新妻綾は暴れながらるし兵に羽交い締めにされ、白綸子から胸乳をはだけた上体を黒い縄で緊縛されていたぶられる。しかし、当て落とした新郎新婦を袋につめ込んで連れ去ろうとした逆くるす党は、宴の後も寝ていなかった土岐兵馬に感づかれる。四人の忍びを率いる頭の浪人は追っ手を退けながら、兵馬によって手傷を負わされた忍びのひとり「あんじょ童子」を容赦なく切り捨てて去った。いっぽう、獲物をかついで隠れ家に向かう三人の忍びの前にまたも姦鬼が現れ、一味への加担を再度申し出る。るし兵たちは頭への取り次ぎを約して姦鬼と別れた。