高原の広大な山林の中に別荘を持つ都城(みやこのじょう)家の別荘番をつとめる茂吉(しげきち)爺さんは、秋のある日、山林の手入れのために建物の裏から伸びる散策路で、地面につけられた奇妙な痕跡に気づく。丘へと続くその道の土の上に、木材を引きずったような真新しい跡が残されていたのだ。不審に思って丘まで登った茂吉爺さんが目にしたのは、丘の頂に高々と架けられた十字架と、そこに全裸で磔にされている若い女の真っ白な肉体であった。素肌に銀の鎖を巻き締められ、黒髪と下腹の繊毛を風になびかせながらがっくりと首を折っているその女は、茂吉爺さんが仕える都城家の若奥さまにほかならなかった。驚愕する茂吉爺さんの前に、そのとき見も知らぬ薄髪赫顔の大男が現れる。