顕子夫人はミッションスクール時代から、磔にされる殉教者に自分を重ね合わせて性的な昂ぶりを味わっていた。夫人からその性癖を聞かされた堀尾は想像力を喚起され、都城家の山荘を舞台にして磔遊戯を試みる。二人きりで山荘に泊まって乱淫を尽くした翌朝、顕子は全裸の身に磔柱を背負わされて裏手の見晴らし台へと登らされる。初秋の風が吹きわたる丘に白木の十字架が立てられ、貴婦人の一糸まとわぬ裸体が鎖で磔にされる。白昼の屋外に全裸をしらじらと曝して磔にされた顕子夫人はマゾの官能を煽られて陶然となり、その美しい磔刑の姿を、堀尾もまた声もなく見守る。磔にされた貴婦人が恍惚のあまり絶命したのがいつの瞬間だったのか、堀尾ですら気がつくことはなかった。