反撥をあらわにする由香を全裸後ろ手縛りのまま座敷の牢の中に閉じこめた老人が、翌朝、気分よく目覚めると、雨戸を締め切った屋敷は静まり返って物音もしていなかった。松沢までもが寝坊したものと信じきって牢に赴いた老人は、格子の錠がはずされて由香が姿を消していることを知る。松沢を呼びたてつつ屋敷の中をむなしく探し回った老人は、松沢が老人を裏切り、愛し合う由香とともに逃走したことをようやく悟る。脱力してへたり込む老人を嘲笑うかのような志津のしゃれこうべの中には、あの雌蜘蛛もすでに居なかった。しゃれこうべを粉々に踏みつけながら一人逆上する老人。雌蜘蛛に脳を喰われたかのように気がふれた老人の笑いが、誰もいない初夏の屋敷に響いていった。