夏、大学で洞穴生物学を教える笠島徹夫は妻の由紀子とともに、瀬戸内の汚染された海域に浮かぶ辺鄙な小島「捨島」に渡る。由紀子の妹でこの春大学に入ったばかりの英子が一人旅の途中でこの島の鍾乳洞「竜神洞」に立ち寄ったきり、二週間以上も消息を絶っているのだ。ヘドロの中に浮かぶ隔絶した島には、漁業権の売却と引き替えに得た補償金をもとに、電気も電話も引かずに男の老人ばかりが十人だけ閉じこもって生活していた。英子の消息を尋ねてまわる徹夫と由紀子は、敵意を剥き出しにした老人たちの応対に手がかりも得られぬまま、山の中腹に口を開ける竜神洞へと向かう。湿った洞窟の闇の中へもぐり込んでいく徹夫と由紀子は、老人たちの警告した「竜神洞のたたり」が何を意味するのか、まだ知るよしもなかった。