北陸の郊外の田園に立つ女子高校の運動場で、ある秋の晴れた午後、三百人に及ぶ二年生の女生徒全員が運動会のマスゲームの練習にはげんでいた。少女から女へとほころび始めた初々しくも健康的な肢体の群れは、体の線もあらわな運動シャツとブルマーに包まれて爽やかな風に吹かれながら躍動する。しかし学校の駐車場に乗り入れたベンツから降り立った二人の男は、金網越しに運動場を眺めて少女たちの躍動をカメラに収めながら、健康美の色気について卑猥な談義を交わしていた。見とがめた中年女教師を適当にはぐらかしたそのノッポの青年と太った中年男は、鹿野佑子先生への訪問客であった。
地方の女子校に赴任してから五年間、男性と個人的に親しいつき合いもせず慎ましやかに日々を過ごしてきた鹿野佑子先生は、心当たりのない来客を告げられて応接室へと向かう。生来の美質を隠し切れないながらも、忘れたい過去を封印しようとするように地味で質素な服装に身を包んだ若い女教師は、応接室に通された二人の客人を見て驚愕に凍りつく。佑子の悪夢の中から甦った二人の男は不敵な笑いを浮かべながら、懸命に哀訴する佑子に迫る。青年に腕を後ろに捻りあげられ中年男に体を撫でまわされた佑子は、忘れようとしていた悪夢が再び始まるのを悟って暗然となる。