【初夏】春が去り山が新緑で覆われる初夏の候、伸介はかねてより計画していた雪乃の磔刑を実行に移すため、丘の中腹の空き地にキ字柱を立てて固定した。すでに伸介とともに暮らすようになっていた雪乃は、ある朝の寝起きを犯されて激しく責めたてられながら、以前から予告されていた磔刑を言い渡されて昇りつめる。風呂を使った全裸をそのまま後ろ手に縛りあげられた雪乃は、呼び出された久に導かれて、明けかけた空の下の森を素足で空き地まで曳かれていく。磔柱を眼にしてわななき喘ぐ雪乃は、立てられた脚立を歩んで宙に架けられた柱に押し上げられ、いましめを解かれた裸身を大の字に拘束される。胸乳を十文字に引き絞られ、胴縄をまわされた体を大の字開脚にされて宙に高々と縛りつけられて、苦痛と心許なさに喘ぐ雪乃。見事な磔刑図を惚れぼれと眺める伸介の横で、昂ぶった久もまた着物を脱ぎ始めたとき、後をつけてきていた典子が素足のまま空き地に現れる。驚愕の悲鳴を噴いてたしなめる雪乃に構わず、その美しい裸形を凝視しながら讃歎の叫びを口にした典子は、久に促されるまま服を脱いでいく。母親が悲嘆の声を振り絞るなか、全裸になった美少女は伸介の手で後ろ手に緊縛され、磔柱の根元に突き転ばされる。錯乱する雪乃の裸形に久が寄り添って優しくなだめるのを眼にしたとき、伸介の脳裡に霊感に打たれたように新たな絵の構想がひらめく。磔刑の裸女を中心にして、その両脇に佇む二つの女体――『三美神(トロワ・グラース)』と称するべきその絵のモデルとなる三つの女体を、早朝の光が燦然と照らし上げていた。