明け方になって淳と佐々木が目覚めたとき、カリンの姿は一夜の夢のように消え去っていた。事件のすべてに決着が着いたことを悟って放心する二人の男。しかし異界人たちが去った後も、アシルによって目覚めさせられた倒錯の嗜虐欲に憑かれて満たされぬ思いに煩悶する淳を、佐々木は痛ましげに見守る。
その後の平穏な日々のなかで、佐々木は異界人とともに現代から姿を消した美女たちの行く末に思いを馳せるいっぽう、「ギロ眼」に取り憑かれたかのように迫力溢れる作品を発表し続ける淳を気にかけていた。ある日淳のアパートを訪れて不在の淳の帰りを待っていた佐々木の前に、取り乱し高揚して異様な笑いを浮かべた淳が現れる。嗜虐欲に憑かれたSM作家はついに理性の抑制を破られ、異界人の念力の助けもなしに女を襲ってきたのだ。レストランで見かけた行きずりの美人女子大生に眼をつけた淳は女のマンションに力ずくで押し入り、激しく抵抗する女を裸に剥き、縛り上げ、数々の責め具で蹂躙し尽くした。淳が証拠を隠滅さえせずに伸びきった女を後に残してきたことを知って佐々木は破滅を悟り、陶然としている淳を急かしてアパートから逃走させる。
一か月後、淳はいまだ警察の捜索に捕らわれることもなく逃走を続けていた。淳が残した構想中の書き下ろし大作『不適応者の群れ』の未完を惜しみつつ、淋しい日々を送る佐々木。ある夕方、佐々木が新宿駅の地下プロムナードで垣間見た猫背の浮浪者の後ろ姿が、SM作家・関谷淳のなれの果てであったのかどうかは、ついにわからずじまいであった。