宴席に戻った清三とひろ子に、振袖姿の花嫁・典子は心得きったように思わせぶりな視線を向ける。清三のかつての教え子だった典子もまた、高校時代に清三と体の関係を持っていたのだ。居並ぶ有力者たちの間で等閑視されていることも気にせず、取り澄ました女たちの淫らな秘密を握っていることにひそかな優越感を覚えて満悦する清三の次なる欲望は、新婦の養母として客たちをもてなす若い校長夫人の美貌へと向けられていた。養女の典子、従妹のひろ子と同様、気品にあふれる校長夫人もまた、逃れることのできぬ致命的な弱みをすでに清三に握られていたのだ。
【2か月前】高校時代に英語を習いに来ていた典子を衝動的に犯してマゾに調教した清三は、その後も典子との関係を続けて、今から二か月前になるある晩、短大を卒業したばかりの典子を喫茶店に連れ込んでいた。周囲の注目を集める美しい娘は、清三から手渡されたバナナをトイレで体内に入れてくるよう命じられて羞じらいに身悶える。だがマゾ娘に対する淫らなプレイは、同じ喫茶店に現れた一組の男女に二人が気づいた時に戦慄に変わる。インポと噂される清三の学校の校長の若く美しい妻が、典子の伯父でもある市の教育委員長と連れだっていたのだ。校長が出張中という清三の情報と、伯母が夫の浮気を嘆いていたという典子の情報とから、清三は教育界の有力者たちを蝕む背徳的な情事を嗅ぎ当てる。情婦である女の家へ養女に出るよう伯父に勧められていたことを知って悔しさに身悶える典子をアパートの自室に一人で送り出した清三は、人目をはばかる校長夫人と教育委員長の後をつけて、二人がホテルにしけ込む決定的な瞬間を目撃する。