【11月2日】恥辱と悔恨にうなされるかのような苦しい眠りのなかで、ブランシュは青空の下で真っ裸を宙空で磔柱に架けられ、ひしめく見物人の群れに好奇の眼で見上げられていた。手足を拡げたあられもない姿で熱っぽいどよめきに囲まれ、鈍磨しきった羞恥の感情の底でなおも屈辱にまみれて腰をよじる姫は、見物人の中にファビオの顔を見出して泣き叫ぶ。群衆の卑猥な嘲笑を浴びて裸身を慄わせる姫の眼前に、破瓜の血が染みたハンカチがファビオの手で突きつけられるところで夢は途切れる。
疲弊しきった体で目覚めたブランシュの脳裏に、夢ではなく、実際に昨夜味わわされた屈辱の数々が甦る。広間の柱に全裸を縛りつけられて家臣たちの好色な眼に曝され、競売される奴隷のように口々に女体を批評されて泣きむせんだブランシュは、それから侯爵の寝室に引き立てられ、明け方近くまで侯爵の獣欲に翻弄され穢し尽くされたのだった。自分の運命の暗転に絶望し、ベッドの隣で満悦しきって眠っている侯爵を横目に裸のままベッドから降り立ったブランシュは、鈍痛の残る下肢を引きずって侯爵が脱ぎ捨てた衣服に歩み寄り、黄金造りの短剣を手に取る。しかし侯爵の無防備な胸に憎しみのままに凶器を振り下ろそうとした間際、部屋の隅に置かれた茶色のフェルト帽がブランシュの注意を奪った。それがファビオの帽子であることを確かめたブランシュはファビオの死を確信し、殺意も忘れて帽子を掻き抱いたまま泣きむせぶ。いつしか目覚めた侯爵が、捜索に出向いた家来が見つけてきたものだと言い繕いつつ高笑いする。帽子の陰に短剣を隠して侯爵に歩み寄ったブランシュは、恋人を殺して自分の処女を奪った男に憎しみの刃を振りかざして突進するが、左手に深手を負いながらも間一髪でかわした侯爵にねじ伏せられてしまう。男の力に組み伏せられ、殺せとまで口走ってののしり叫ぶブランシュを冷たく見降ろしながら、侯爵は苦痛と憎悪に顔を歪めて、死よりもつらい責め苦を美しい娘に与えようと宣告するのだった。