【14XX年10月31日】大飢饉に見舞われた十五世紀フランスのある秋の夜、ドーフィネ地方の深い森の中を二人の旅の女が彷徨っていた。イタリアはピエモンテの領主アスカミオ・ド・モンフェラ公爵の娘であるブランシュ姫は、はるか異国フランスを旅するさなか、森の抜け道を探しに行った家臣ファビオ・デル・ドンゴとはぐれ、ファビオの妹でもある侍女のクレリアとともに行き暮れてしまったのだ。先般、父の病の平癒を願ってアヴィニョンに巡礼に訪れた姫は、ドーフィネ地方デスノスの町に滞留しているという名医マチュラン・ピカールの話をさる修道僧から聞き、ピカールをピエモンテに迎えるためにデスノスに向かう途上であった。月に照らされる深い森の中、飛び交う蝙蝠の大群に怯えながら馬を進めていたブランシュとクレリヤは、森の奥から聞こえる祭のような楽の音に不安をつのらせた時、乗っていた馬たちに逃げられてしまう。木立の中に不気味な灯りを見出して近づいた二人は、乱れた服装に髪を振り乱した女たちが蝋燭を手にして彼方へ消えてゆくのを目撃する。万聖節を明日に控えて悪魔の宴(サバト)が催されていることを察した二人は、身を寄せ合ってうずくまりおののき慄える。どれほどかの後、ふいに近づいてきた山羊面の騎馬の一団が身を縮めている二人を見出し、恐怖のあまり気を失った旅の女たちをさらって駆け去った。
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その夜、デスノス西方の丘陵に建つ領主シャルル・ド・ブロン侯爵の居城では、領内の諸侯を招いた豪勢な饗宴が開かれていた。城主侯爵をはじめとして十数人皆が悪魔の面をつけ、豪奢な料理を食い散らかした果ての奇妙な宴席に、黒人奴隷たちが丸い蓋のついた巨大な銀色の皿を一人あて運び込んでくる。侯爵の合図で蓋が取りのけられると、それぞれの皿の上には、手足を折り曲げて縛られた裸の若い女が、猿轡を噛まされ恐怖に眼を見開いて盛りつけられていた。森の中のサバトに誘い出された女たちが闇に乗じて城へとさらわれ、諸侯をねぎらうための生贄に供されていたのだ。歓声とともに女たちに取り付いた諸侯は、黒人奴隷の助けを借りて悲鳴をあげる女たちの美肉をむさぼっていく。男を愉しませることができずに用済みになった女は、町のはずれの洞窟に住みつく病者たちに投げ与えられて生き血を絞られる運命にあった。淫らな饗宴をひとり冷ややかに睥睨する侯爵のもとに、赤黒だんだらの胴着に三角帽子を着けた小人フォラスが現れる。命じられた儀式の用意が整ったことを告げられた侯爵は、淫らな饗宴をそのままにしてフォラスとともに広間を後にする。
デスノス城の東の一角にそびえる天主閣「黒魔術の塔」の最上階にある円形の部屋には、悪魔じみた儀式のための祭壇と数々の器物が備えられていた。フォラスを伴って現れた侯爵を、お抱えの錬金術師フランソワ・プレラチが出迎える。部屋の隅には小綺麗な衣裳の若い娘が、猿轡をされ手足を縛られた姿で恐怖に眼を見開いて転がされていた。悪魔の儀式の生贄される葡萄酒商人ジュールの娘マリヤはすでに白い下穿きをフォラスに奪われ、生贄にふさわしい生娘であることを確かめられていた。男三人がかりで生まれたままの姿に剥かれたマリヤは、恐怖のあまり抵抗のそぶりもない裸身を祭壇の上に仰向けに伸ばされ、手足に革紐を掛けまわされて大の字に磔にされる。祭壇をまたいで大きく開いた膝と左右に伸ばした腕を固定され、細腰と乳ぶさの上を縛りつけられてもはや寸分も身動きできぬまま、猿轡を噛まされた頭を台の端からのけぞらせて振りたてるしかない娘の白い裸体を前に、禁断の黒ミサにとりかかるプレラチ。香炉からたちのぼる異様な香りが立ちこめるなか、祭壇の四隅の燭台に立てられた黒い蝋燭に火がともされ、照らし上げられた生贄の白い腹の上に逆しまの十字架が置かれると、プレラチは悪魔への祈りを捧げつつ「賢者の石」の製法を乞い求め、聖体パンを生贄の股間に押し込む。香炉とパンに仕込まれた秘薬ベラドンナの効果により、やがて憑かれたように総身をうねらせて娘が身悶え始めると、侯爵は猿轡を取り去った生贄の腹に鞭をたたきつけ、絶叫する娘の口から悪魔の秘密を聞き出そうとする。激しい鞭打ちに白い腹を血に染めながら苦痛に陶酔して総身を反り返らせ、錯乱した言葉を口走る処女の生贄は、しかし、非金属を貴金属に変えるという「賢者の石」の製法の秘密をついに明かすことなく消耗しきっていく。ミサの失敗に失望したプレラチが、より高貴な血をもった処女を生贄に捧げる必要があることを申し立てると、フォラスは、今夜折しも城に連れ込まれた二人の旅の女が、その高貴な風貌ゆえに狼藉をはばかられて城内に介抱されていることを告げる。執念に狂った侯爵は、どこの高貴の姫とも知れぬその女たちを次の生贄とすることを決意し、不安がるプレラチを一蹴したうえ、用済みとなったマリヤをフォラスのなぶりものとして与える。
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【11月1日】万聖節の日となる翌朝、滞在中のデスノスの町から近くの森に薬草を探しに出かけた医師ピカールは、狼に襲われて深手を負ったまま草むらに倒れている若い騎士を見つけて介抱する。朦朧とした意識の中で姫を気づかうその騎士こそは、昨夜、護衛していたブランシュ姫とはぐれ、森の中で狼を撃退して力尽きた騎士ファビオ・デル・ドンゴであった。ピカールが滞在するデスノスの宿屋「赤猫亭」に運び込まれて手厚い処置を受けたファビオは昼近くになって目覚め、医師の娘ラミアから事のいきさつを聞かされる。目指す人物を探し当てたことに安堵しつつも、姫の安否を気づかって手傷も顧みずに起き上がろうとはやりたつファビオ。病人を見舞いに出た父の留守を預かっているラミアは、騎士のひたむきさに娘らしい好意をつのらせながら懸命に引き止めようとする。
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デスノス城ではブランシュが城主の居間に迎えられ、これまでの旅のいきさつをブロン侯爵に話していた。拉致同然にして城に連れ込まれたものの、その後に手厚いもてなしを受けたことでいささか警戒をゆるめていたブランシュだったが、年齢や貞操まで聞き出そうとする城主侯爵の好色でぶしつけな質問に当惑し、憤りの色を隠せない。行方不明のファビオを捜索し医師ピカールも城に呼び出すと約束する侯爵の強引さに負けて、城への逗留を承諾したブランシュは、貴族の娘の誇りなど実際は意にも介さない邪悪な侯爵によって、十八歳の処女の身が黒ミサの生贄として値踏みされているなど思いもよらないのだった。
生贄に定めた姫の純潔に確信を抱いた侯爵は、旅の一行の行方が途絶えても手がかりが残らないことを確かめてプレラチとともに満悦し、騎士ファビオに捜索と暗殺の手を差し向ける。他方、デスノスに滞留して病人たちに慈善で施療していると評判の名医ピカールに対しては、錬金術の心得がまったくないと知って興味を失う。当夜に再度の黒ミサを期した侯爵は、気位の高い姫が全裸で祭壇に縛りつけられたときの悲嘆を思って胸躍らせながら、昨夜下げ渡されたマリヤを拷問室に連れ込んで責め苛んでいるフォラスの見物に向かう。姫の侍女クレリヤは主人の生贄の儀式に立ち会わされたうえ、首尾良く秘密を手に入れた暁にはプレラチに与えられることが約束された。
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ラミアの目を盗んで赤猫亭を抜け出し姫と妹を探すために森へ舞い戻ったファビオは、深傷に痛む体をかろうじて支えながら、手がかりもない深い森の中で途方に暮れていた。鷹に襲われていた伝書鳩を気まぐれで助けたファビオは、その場に現れて手紙の名宛人と申し出た羊飼いのジャンと知り合う。賎しからぬ人品を伺わせる若者は、折しも森の中に現れた城の役人たちからファビオの身を隠れさせるとともに、ブランシュ姫とクレリヤがデスノス城にいること、ファビオを殺すために捜索の手が繰り出されていることを告げる。事態のただならなさに緊迫するファビオに対して、羊飼いは、現領主の甥にしてデスノス城の正統の後継者ジャン・ド・ブロンだと素性を明かした。
赤猫亭に戻って再び手当てを受けたファビオは、公子ジャン、医師ピカール、その娘ラミア、ジャンの腹心ピコらに囲まれ、ジャンが企てている反乱の計画を聞かされる。ブロン侯爵の暴政に苦しむ百姓たちの支持を得た正統の嗣子ジャンは、女中に扮して城内に潜入させた妹マルグリットから伝書鳩で情報を得つつ、蜂起の機会をうかがっていたのだ。ジャンは、好色なブロン侯爵が美貌のブランシュ姫を我がものとするためにファビオに刺客を差し向けたものと推測して、ファビオの利害が反乱軍と一致していることを説く。かつて城にさらわれた女たちが町はずれの洞窟に住む病者たちに下げ渡されていた事実を告げるピカールの証言も、事態の急迫を裏付けていた。ピカールをピエモンテへ伴うためにも反乱軍への加担を決意したファビオは、恋するブランシュ姫の身に今夜にも迫っている貞操の危機を気づかい、数日後の決行の予定さえ待ちかねる思いを抱きながら、まだ為すすべもないのだった。
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その夜、ブランシュは自室に特別にしつらえられた豪華な浴槽の中で湯のぬくもりにひたりながら、形のない不安にさいなまれていた。イタリア出身と知れた姫のためにわざわざ浴槽を運び込んでくれた城主の歓待ぶりに緊張をほどかれながらも、その日一日に城内で眼にした光景の数々に、処女の感受性はただならぬ異様さを感じ取っていたのだ。女中の類がほとんどいない城中でわずかに眼にした女といえば晩餐の席で家臣たちにはべっていた気品ある美女たちだけで、ブランシュが紹介された時のその憐憫と同情の入り混じった表情が奇妙な印象を残していた。そして侯爵に城内を案内されていた昼間に一室で行き会ったのは、若く美しい全裸の女を四つん這いにさせ首に巻きつけた鎖を引いて床の上を追い立てている小人フォラスの姿であった。背中に鞭痕を刻まれ乳ぶさを揺らして這いずりまわる女の腰には、処女の姫には眼にするのもおぞましい黒い鉄の貞操帯が嵌められていた。羞恥と嫌悪に身震いして眼を伏せ、小人のいやらしい視線で下からすくいあげるようにのぞき込まれて戦慄したブランシュは、やがて自身をも同じ境遇に落とそうともくろんでいる侯爵が、羞じらう乙女の姿に背後から好色な視線を浴びせていることを知るよしもなかった。
無垢の身を抱き締めるようにしておぞましい回想を振り払ったブランシュの思いは、いまだ行方の知れないという恋人ファビオの境遇へと移る。かつて一度だけ口づけを交わした身分違いの凛々しい若者の面影を追い、甘美な陶酔にふくらむ乳ぶさを抱いてひとり頬を染めていたブランシュの夢想は、しかし、クレリヤが控えているはずの衝立の陰で起こったただならぬ物音に破られる。再び不安に駆られて侍女の名を呼ぶブランシュの前に、衝立の陰から顔をのぞかせたのは、忍び笑いを浮かべた小人フォラスであった。驚愕し、タオルで胸を覆って浴槽にしゃがみ込んだブランシュの傍に歩み寄ったフォラスは、高貴の姫の甲高い叱声をものともせず、白い裸身を湯の中に縮めている姫の周囲を回って卑猥なからかいを浴びせかける。あまりの侮辱に声を失って慄えるブランシュの前で衝立が押しのけられると、姿の消えたクレリヤの代わりに、腰布だけをまとった四人の巨人の黒人奴隷が歩み出る。フォラスの命令で浴槽を肩に担ぎ上げた奴隷たちは、湯を張ったままで一つの輿と化した浴槽を、その中で悲鳴をあげる全裸の姫もろとも運び出していく。
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衝撃と恐怖のあまり茫然となってあらがう気力もないブランシュの裸体を乗せたまま、黒人奴隷たちの担ぐ浴槽は黒魔術の塔の最上階の部屋へと運び上げられた。黒衣をまとったプレラチに迎えられ、恐ろしい儀式の道具に取り囲まれた暗い部屋の中央に浴槽を降ろされたブランシュは、タオルでわずかに隠れた裸に鳥肌を立ててわななきながら無言の僧を問い詰めののしる。暗がりから姿を現した侯爵を眼にして憤りを噴出させたブランシュだが、激しい非難と抗議を不遜な冷笑であしらわれ男たちの冷酷な視線に射すくめられて、貴族の娘の誇りをくじかれていく。けがらわしい黒ミサの生贄にされると知って慄えるブランシュの傍には猿轡をされた侍女のクレリヤが椅子に縛られて据えられ、あるじの姫が純潔を穢されるのを見せつけるよう仕立てられていた。幾重もの辱めを前にして絶望にすすり泣くブランシュは、侯爵の命令を受けた四人の黒人奴隷にタオルをむしり取られ、浴槽から担ぎ上げられた裸体を祭壇の生贄台に仰向けに転がされ縛りつけられていく。泣き叫んで抵抗する処女のか弱い両手と両足が容赦なく引き伸ばされ拡げられ、いましめの縄を食い込まされて、ほのめく灯火の中に白く美しい生贄の裸体をさらけ出した。黒人奴隷を下がらせた後でプレラチは儀式の準備にかかり、黒い死蝋の蝋燭を燭台代わりに生贄の肌の上に立てていく。慄える双の乳首、くぼんだ腹、わななく両脚に蝋燭を立てられて肉の燭台と化した姫は、苦悶の身悶えにつれて滴る熱蝋に肌を灼かれて悲鳴を噴きこぼす。だが、明かりを消された室内に妖しく浮かび上がるブランシュの裸体を囲んでまさに黒ミサが始まろうとした時、思いもかけぬ発見を告げるために駆け込んできたフォラスが儀式を中断する。ブランシュを連れ去らせたあと姫が脱ぎ残した下着の間をまさぐっていたフォラスは、アヴィニョンの修道僧から名医ピカールに宛てて姫に託された極秘の手紙を、姫の守り袋の中から見出したのであった。マチュラン・ピカールが変名だと露見しつつあることに注意を促すその手紙は、ピカールの正体が、「賢者の石」の秘密をただ一人解き明かしたと噂され、今は身を隠して慈善のために全国を遍歴している高名な錬金術師ニコラ・フラメルであることを告げていた。思いがけぬ巡り合わせに狂喜した侯爵は、失神寸前のブランシュの頬を張り飛ばして手紙を預かったいきさつを聞き出し、翌日にもピカールを城に召し出すための策をプレラチとともに練る。もはや黒ミサの必要がなくなったいま、大の字の裸体をさらけ出している美しい姫の立場は、サタンへの生贄から淫虐な侯爵の花嫁へと変わった。いましめを解かれて再び後ろ手に縛られていくブランシュは悲痛に哀願しながら、花嫁として素っ裸を家臣たちの曝しものにされたあと一晩中侯爵のなぶりものにされることを告げられ、身を揉んで泣きじゃくる体を引きたてられていく。椅子に縛られたまま部屋に残されたクレリヤにはプレラチが歩み寄り、無念に忍び泣く侍女の美貌を覗き込む。荒々しく胸元を引き裂かれ、縄目の間に剥き出しにされた乳ぶさにおぞましい愛撫を這わされていきながら、可憐な侍女もまた汚辱の夜を迎えようとしていた。
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【11月2日】恥辱と悔恨にうなされるかのような苦しい眠りのなかで、ブランシュは青空の下で真っ裸を宙空で磔柱に架けられ、ひしめく見物人の群れに好奇の眼で見上げられていた。手足を拡げたあられもない姿で熱っぽいどよめきに囲まれ、鈍磨しきった羞恥の感情の底でなおも屈辱にまみれて腰をよじる姫は、見物人の中にファビオの顔を見出して泣き叫ぶ。群衆の卑猥な嘲笑を浴びて裸身を慄わせる姫の眼前に、破瓜の血が染みたハンカチがファビオの手で突きつけられるところで夢は途切れる。
疲弊しきった体で目覚めたブランシュの脳裏に、夢ではなく、実際に昨夜味わわされた屈辱の数々が甦る。広間の柱に全裸を縛りつけられて家臣たちの好色な眼に曝され、競売される奴隷のように口々に女体を批評されて泣きむせんだブランシュは、それから侯爵の寝室に引き立てられ、明け方近くまで侯爵の獣欲に翻弄され穢し尽くされたのだった。自分の運命の暗転に絶望し、ベッドの隣で満悦しきって眠っている侯爵を横目に裸のままベッドから降り立ったブランシュは、鈍痛の残る下肢を引きずって侯爵が脱ぎ捨てた衣服に歩み寄り、黄金造りの短剣を手に取る。しかし侯爵の無防備な胸に憎しみのままに凶器を振り下ろそうとした間際、部屋の隅に置かれた茶色のフェルト帽がブランシュの注意を奪った。それがファビオの帽子であることを確かめたブランシュはファビオの死を確信し、殺意も忘れて帽子を掻き抱いたまま泣きむせぶ。いつしか目覚めた侯爵が、捜索に出向いた家来が見つけてきたものだと言い繕いつつ高笑いする。帽子の陰に短剣を隠して侯爵に歩み寄ったブランシュは、恋人を殺して自分の処女を奪った男に憎しみの刃を振りかざして突進するが、左手に深手を負いながらも間一髪でかわした侯爵にねじ伏せられてしまう。男の力に組み伏せられ、殺せとまで口走ってののしり叫ぶブランシュを冷たく見降ろしながら、侯爵は苦痛と憎悪に顔を歪めて、死よりもつらい責め苦を美しい娘に与えようと宣告するのだった。
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傷の手当てをして朝食を済ませた侯爵は、前夜の晩餐に同席した七人の女奴隷を伴って城の地下にある拷問室に降りる。かつては侯爵に攻め滅ぼされた敵国の姫だった女奴隷たちは、それぞれ最初にそこに連れ込まれて責められ、侯爵の膝下に這いつくばって屈服したいまわしい屈辱の記憶を呼び覚まされておののく。地下牢に接する広い地下拷問室は、侯爵の嗜好にかなうべく、拷問台・車輪・X字架・木馬・枷・鎖にはじまるありとあらゆる責め具を備えられていた。一メートル四方に満たない小さな鉄の箱が女たちの前で開けられると、黒い革紐で窮屈な後ろ手あぐら縛りにされ、白い裸体を縦横に締め上げられて一個の肉塊と化したブランシュ姫が転がり出てくる。窮屈な箱詰めにされたまま処罰の時を待たされていたブランシュは、侯爵に足蹴にされ、全身から苦悶のあぶら汗を絞り出しつつ革紐をきしませて呻き喘ぐ。新入りの女の無惨な姿の周囲に呼び寄せられておそろしげに見降ろす七人の女奴隷は、一人ずつ名指しされて、自分が受けた責め苦のなかで最もつらい責めを問いただされる。女たちはかつて皆、戦勝に酔う兵士たちの間を全裸で引き回され、木馬に乗せられ、吊られ、くすぐられ、女の羞恥と誇りを無惨に引き裂かれて侯爵に屈服した者たちばかりなのだ。侯爵の命令でいましめを解かれたブランシュは、一メートルほどの鉄棒の両端に手首を結びつけられ、天井から垂れる鉤で吊り上げられていく。あらがう気力もなく観念の眼を閉じたブランシュの華奢な体が宙吊りに引き伸ばされ、両手に全体重をかけつつ床を離れてぶら下がる。頭をのけぞらせ爪先を痙攣させて苦悶するブランシュは、はかない悲鳴と抵抗を無視して宙に浮いた両足首をも鉄棒の両端にくくりつけられ、あさましいX字の吊り姿を一同の前にさらけ出して、すすり泣きながら美しい裸体を宙に伸びきらせる。自分を傷つけた憎い女の無惨な全裸宙吊りを臨んで腰を降ろした侯爵は、女奴隷たちに羽根や刷毛を受け取らせ、目の高さに白い腹をさらけ出している生贄の肉を一斉にくすぐらせる。女の体の急所を知り尽くした狡猾ないたぶりを、脇腹に、臍に、腰に、足の裏に、寄ってたかって這わされて、泣き笑いに似た絶叫を迸らせながら総身を痙攣させて宙に跳ねまわるブランシュの裸体。取り囲む女たちの頭上で身悶えるブランシュの上半身は、乱れ髪を振りたて、あぶら汗を噴き、尖った乳首を慄わせつつ、悲鳴を絶息するような喘ぎに変えていく。光を失ってとめどなく哀願の涙を流すブランシュの弱りぶりに屈服を認め、侯爵が姫の体を吊りから降ろさせようとするのを、駆け込んできたフォラスが未練がましく引き止め、さらにフォラスに呼びにやらせていたプレラチが、全裸を後ろ手に縛られ腰に貞操帯を嵌められたクレリヤの縄尻を引いて現れる。屈辱の運命もあらわな互いの裸身を目の当たりにし、残酷な主従再会に激しく泣き交わす姫と侍女。だが、フォラスは慟哭する主従の悲嘆のさまを嘲笑うようにブランシュの足首に張り渡された鉄棒に腰を掛け、姫の号泣を、手首に食い込むすさまじい重さに耐えかねての絶叫へと変える。縄の食い込んだ手首から血を流しあぶら汗を噴いた全身を痙攣させて許しを乞う姫の苦しみを意にも介さず、鉄棒に腰掛けた小人は頭上をまたぐように拡げられた女の脚につかまって、白い肉をブランコのように乗りこなす。嘲るようなフォラスの小唄に、ブランシュの悲痛な呻きと鎖のきしみが交錯する凄惨な拷問図絵。あまりの酷さに飛び出そうとしたクレリヤはプレラチに縄尻を引かれて転がされ、乳ぶさに鞭を振り下ろされる。失神寸前の苦痛に弱々しく喘ぐばかりとなった姫の体が侯爵の命令でようやく降ろされ、床に伸びきった体が仰向けに転がされる。侯爵の足に服従の口づけを命じられたブランシュはボロボロの体を起こして侯爵の足元に跪き、ひそやかな嗚咽を洩らしつつ、侯爵の革長靴を抱き締めて唇を押しつける。ピエモンテ領主ド・モンフェラ公の娘、気丈で美しかった十八歳のブランシュ姫は、いま拷問室の床に全裸を這いつくばらせ、侍女や下劣な男たちが見守るなか、自分の処女を奪った、殺そうとまで憎んだ男に服従を誓わされたのだ。完全に屈服を遂げた女をさらに辱めようとする侯爵によって貞操帯の装着が命じられると、黒人奴隷に引きずり起こされた姫は泣き叫び哀願しながら、つい昨日は処女の嫌悪をもって顔をそむけたあさましい鉄の装具を、剥き出しの我が身に装着されていく。後ろ手の手枷、鎖で短く繋がれた足枷、首輪までもつけられ、首輪から伸びる鎖の端を黒人の手に握られて立たされたブランシュの姿は、すでに気位の高い貴族の娘ではなく、白い肉の奴隷へと変わり果てていた。奴隷の調教のためブランシュとクレリヤの身がフォラスの手に預けられた時、折しも遣わされていた使者が戻り、医師ピカールを同行したことを告げる。遠国まではるばる訪ねてきた目当ての人物の名をここで聞いても、もはやブランシュには為すすべもなく、足鎖を引きずりながら、クレリヤとともに裸身を引き立てられていくことしかできないのだった。
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城主の病気を告げる城からの使者に連れられ城内の一室に案内されていた医師ピカールは、贅沢な調度に囲まれた室内で延々と待たされながら、その口実に疑念をつのらせていた。やがてプレラチを伴って現れた侯爵の興奮冷めやらず病気のそぶりもない様子に対して、皮肉を含んだ難詰を向けるピカール。悪びれもせずに嘘を認めた侯爵は、大学者ニコラ・フラメルを召し出すという真意を明かし、とぼけようとするピカールに修道僧からの手紙を突きつける。内心動揺しつつも自分の正体を認めたピカールは、私信を開封した侯爵の不作法を責め、手紙をもたらした使者に会えないと知って直ちに立ち去ろうとする。領主への恐れのかけらもない尊大な振るまいに激怒しながらも医師を引き止める侯爵。領内の住民の困窮を救うために錬金術の秘密が必要だと言い向けられたフラメルは激しく憤り、普段から領民を苦しめるばかりの侯爵の暴政を厳しく糾弾する。激昂して抑制をかなぐり捨てた侯爵はフラメルの美しい娘に破廉恥な拷問を加えるとほのめかして責めたてるが、大学者の固い信念と信仰を曲げることはできなかった。昂然と頭を起こして怯むことのないフラメルを地下牢へ連れ去らせながら、侯爵はラミアを捕らえさせる命令を聞こえよがしに発する。このとき、女中として城内に潜んでいたマルグリットが地下牢へ連れ去られるフラメルを目撃し、兄のジャンに急を告げる伝書を放つ。
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赤猫亭では名医の治療を受けて快癒に向かいつつあるファビオが、看護にあたるラミアと笑い交わしていた。元気を取りもどして軽口をたたく青年をまぶしげに仰ぎ、ブランシュ姫に寄せるファビオの想いを敏感に感じ取りながら、ラミアは自分の胸中に芽生えた初めての恋を健気にも隠し通す。折しも城に呼び出された父からの使いと称してラミアを迎えに遣わされてきた役人たちのものものしさに、赤猫亭の主人ピコは警戒を抱く。強引に部屋に踏み込んできた隊長の粗暴な言動からファビオは事態の急変を悟り、ラミアを守るために剣を抜く。はやり立って襲いかかる兵士を次々と切り捨てて奮闘するファビオだが、背後から回り込んだ捕手にラミアを人質にとられてあえなく投降する。ファビオとラミアは互いの目をいたましげに見つめ合いながら、役人たちの不作法な手で荒縄をかけられていった。
ピカールが捕らわれたことを妹の伝書鳩で知らされたジャンが赤猫亭に駆けつけたときには、ファビオもラミアも連れ去られた後であった。無念を言いつのるピコと領民たちから事の次第を聞き出したジャンは、ピカールの正体を知らないがゆえに侯爵の企みを計りかねつつも、予定された蜂起の時を明朝八時、攻撃対象を近郊の城シャランに変更して、あわただしく決起の準備にとりかかる。
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デスノス城の地下拷問室では手足に枷を嵌められたフラメルが木椅子に縛りつけられて、捕らわれた娘のラミアが連れて来られるのを待たされていた。侯爵への協力を拒んであくまでも強情を張りとおす大錬金術師を屈服させるために、その眼前で、罪もない娘に辱めを加えて見せようというのだ。事情もわからぬままに捕らわれ革紐で後ろ手に縛られた姿で黒人奴隷に引き立てられてきたラミアは縛められた父の姿に悲痛な悲鳴をあげて身悶えるが、フラメルは動転する娘をたしなめ、領民を救うため犠牲の苦難に耐えるよう言い含めるのだった。侯爵に卑猥な質問を浴びせられ真っ赤になって柳眉を逆立てるおぼこ娘に対して、笑い合いふざけ合いながら侯爵とフォラスが選んだのは、裸に剥いて木馬に乗せる「牝馬責め」だった。後ろ手を解かれたラミアは羞じらい身悶えながら二人の黒人奴隷に寄ってたかって衣服を引きむしられ、最後の一枚まで剥き取られた裸身に再び掛けられた後ろ手の縄を首にまわされ引きしぼられて、泣き濡れた美貌を曝しあげられる。両脇を抱かれ、かがみ込む腰をまっすぐに引き伸ばされて立たされたラミアは、羞恥のすすり泣きを噴き上げながら未成熟な裸身を侯爵の眼に曝し、乙女の乳ぶさをフォラスの愛撫に任せるしかない。呻き泣くラミアの前に運ばれてきたのは、胴を太くした拷問用の木馬の背を丸くして剛毛を植えつけた、羞恥を与えることを目的とした女専用の木馬「牝馬」だった。悲鳴をあげて尻込みする処女が馬の背にまたがらされ、伏せようとする上体が馬の背にそそり立つ垂直の棒にくくりつけられる。馬上に全裸を曝す羞恥に泣き叫び、白い肌を紅潮させ、縄目に絞られた胸の間から汗を噴き出しつつ、小鼻と唇を喘がせて荒い息を吐き、哀れに腰を踊らせて暴君たちを楽しませる娘の美しさ。羞恥の限界を超えて無力な父に助けを求める娘の悲痛な叫びと、蒼白になって神に祈るしかできない父の苦しげな励ましの声が交錯するなか、罪もない生娘への責めがさらに苛酷さを加えていく。プレラチの手で、塗られた箇所が火照って痒くなる悪魔の膏薬を乳首と足の裏に丹念になすりつけられたラミアは、やがて体じゅうに広がっていく異様な刺戟に首すじまで紅潮させ、悲痛な呻きを噴いて身をよじる。白い裸の乙女はうなじを反らして喘ぎ歔き、あぶら汗に濡れ光る胸を突き出して乳ぶさをゆすり、不自由な手で空を掴んで呻きを絞り出して妖しい錯乱の悶えを演じていく。足に車がついていた牝馬をフォラスが首鎖を引いて室内を引き回すと、でこぼこの石畳の上を揺れながら動く牝馬の上で、刺戟を煽られたラミアは柱をゆさぶって哀願し、すすり泣き、息も絶えだえに悶え狂う。愛娘の裸身に加えられる辱めのむごさに耐えかねたフラメルはついに屈して、悲痛なあきらめとともに侯爵への協力を約した。協力の見返りに、今後フラメルが常にラミアを同伴することを承諾した侯爵は、ようやく服を着せられてうなだれているラミアの姿を前に、責めを中断したことをむしろ残念がるふうでもあった。
[ 3-4 ]
デスノス城の地下牢に囚われたファビオは、足枷を牢の床の鉄輪につながれて閉じ込められた絶望的な状況のもとにありながら、なおもブランシュ姫とクレリヤを救い出すことに望みを巡らせていた。二人の黒人の牢番が現れてファビオに手枷をかけ、牢から引き出して大広間へと曳いていくと、明るいシャンデリヤに照らされた広間には城主のブロン侯爵と十数人の家臣たちが、傍らに女を侍らせて豪勢で淫らな饗宴に打ち興じていた。ファビオの登場で静まりかえった宴席の城主のそばの主賓席には、ピカールとラミアが事の成り行きを不安げに見守る。黒人奴隷に左右から動きを押さえられ、姫と妹の姿がその場にないことを見て取って失望するファビオ。ブロン侯爵はファビオの勇猛さを誉めそやしてみせつつ、宴席の余興に剣技での決闘を演じて見せるよう家臣たちをあおりたてる。残酷な座興に不安をつのらせるラミアを気づかいつつ、ファビオは侯爵と家臣たちを挑発する。ファビオを倒した者に、つい前夜に全裸のお披露目をさせられた姫を与えると侯爵が約すして家臣たちの興奮を巻き起こすと、その喧噪のなか、侯爵の背後の扉からフォラスに曳かれてブランシュ姫が連れ込まれる。全裸の体に後ろ手の手枷と鎖のついた足枷を課され、腰に固く食い込んだ貞操帯と鋲を打った黒革の首輪だけをまとわされて、首輪の鎖を犬のように曳かれながらよろめき歩くという、女として見るも浅ましい奴隷の姿を曝しながら、引きずられるようにして侯爵の背後のひときわ高い台上に立たされ、満座の視線を浴びせられるブランシュ。金髪の頭を深々とうなだれ、羞恥でうなじまで染めて丸い肩先を小刻みに慄わせている均斉のとれた白い裸は、つい先夜の処女としての激しい抵抗の名残もなく、苛烈な辱めの前に貴族の娘はおろか女の誇りまで完全に明け渡した痛ましい屈服の姿にほかならなかった。がっくりと顔を伏せた姫の金髪を小人が背後から掴んで引っ張り下ろし、恥辱に固く眼を閉じた美貌を仰向けにさらけ出すと、それが愛するブランシュ姫と見知ったファビオは激昂の絶叫を噴き上げ、愛する恋人の姿を認めた奴隷姿の姫は絶句して気を失う。ブロン侯爵は無惨な主従再会の愁嘆場を嘲笑いながら、クレリヤもが家臣に与えられたことを告げてファビオの怒りを煽りたてる。ブランシュ姫の美しい肉体に魅惑されて名乗りを上げた家臣たちとの決闘が、槍を構えて居並んだ兵士たちに囲まれた広間の中央で始まる。失神から目覚めさせられて柱に立ち縛りにされ、フォラスに短剣を擬せられたまま、感情を失った瞳を見開いて恐ろしい座興を見せつけられるブランシュ姫。だが、枷をはずされて愛剣を渡されたファビオは左脚の怪我をものともせず、イタリアでも名高い剣技を発揮して武骨なフランスの武士を二人たてつづけに屠り去る。家臣たちの重苦しいどよめきを受けつつ、姫を救い出す算段にファビオが思いを巡らせているとき、決闘を見守るフラメルとラミアの隣では、城内で密偵の女を捕らえたとの報告がブロン侯爵のもとにもたらされる。興味をそそられた侯爵は決闘を中止させ、なおも意気軒昂なファビオを適当にあしらって広間を後にする。侯爵に続いてフォラスに引かれていくブランシュ姫のうなだれた姿に励ましの声をかけ、フラメルとラミアを力づけながら、ファビオは再び枷を課されて地下牢へ連れ戻されていく。それを見送るフラメルは、頼みのマルグリットが捕らわれたことを覚って、残された手だてに必死で考えを巡らせていた。
[ 4-1 ]
ブランシュを屈服させラミアを泣き叫ばせた拷問室に、この日みたび足を運んだ侯爵を、衛兵頭のゴタールが迎え出る。おぞましい拷問の新たな生贄となるべき女中マルグリットは木椅子に縛りつけられ、自責の念で引きしまった顔を深くうなだれて金髪で隠していた。髪を掴んで顔を上げさせられたマルグリットは、眼を閉じて表情を殺した美貌を侯爵の鞭の柄で小突きまわされる。一揆の決行を明日に控えたジャンから求められて城内の状勢と備蓄のありかを記した伝書を放とうとしていたマルグリットは、かねてから言い寄られていた下男ピエールにその姿を見咎められたことから、正体を知られ捕らわれてしまったのだった。汚らわしい男のために企みを暴かれたうえ敵に捕らわれて無念に悶えるマルグリット。侯爵の前に呼び出されたピエールは、懸想していた美しい女中を痛めつけて訊問する役目を許されて勇躍する。屈辱に蒼ざめるマルグリットにふてぶてしく言い寄ったピエールは、誇りも露わに厳しい口調で罵倒し返したマルグリットに怒りを掻き立てられ、本来の凶暴さを剥き出しにしてマルグリットを椅子ごと突き飛ばす。いましめを解かれたマルグリットは逞しい男の手の中でむなしくあらがいながら、髪を掴んで引きずり起こされ、粗衣を胸元から引き裂かれる。あらわになった胸を両手で隠し、床に打ち伏せて白い背肌をさらけ出したマルグリットは、両手を背中にねじ上げられ髪を掴んで引きずり立たされ、豊かに実った乳房を弾ませながら、ド・ブロン侯爵家の血を引く白く輝く裸身をさらしものにされる。木肌剥き出しの拷問寝台に仰向けに横たえられ、四肢を拡げてくくりつけられたマルグリットは、二つの丸い穴をくり抜いた幅広の革の乳枷を胸に巻きつけられ、美しい乳房を絞り出される。おぞましい拷問具に拘束されて恐怖に身震いする女体への拷問が始まり、拷問寝台の仕掛けで四肢を極限まで引き伸ばされた白い裸体は関節を鳴らし白い腹を痙攣させて苦悶する。虚空を掻きむしって苦悶するマルグリットの胸に嵌った乳枷の、乳房を取り巻く丸い穴が締め上げられて、絞り上げられたふくらみが上向きにそそり立ち充血する。絶叫しあぶら汗を噴いて苦悶する女体を冷酷に見降ろしながら、一揆の首謀者を訊き出そうとする侯爵は、強情を張り通すマルグリットへの鞭打ちを命じる。ピエールの逞しい腕で力いっぱい振り降ろされた鞭が伸びきった白い腹に弾け、激痛に泡を噴いてのたうつマルグリット。鞭痕から血を噴き出させ、恥と苦悶に狂乱して意識まで朦朧となった高貴の姫は、再び鞭をたたき込まれると意地を張りとおす気力はすでになかった。充血した乳房を揺らしながらマルグリットは侯爵の訊問に答えて、一揆の首謀者を「シャランのジャン」と、決起の時刻を明日の夕刻と白状させられる。満足しきった侯爵はその言葉に混じった嘘に気づかず、マルグリットの体をピエールに与えて拷問室を後にする。拷問寝台の上に裸の四肢を拡げてさらけ出し、責めあげられた乳房を紫色に充血させ、鞭痕の残る白い腹をひくつかせて伸びきったド・ブロン侯爵家の姫マルグリットには、もはや領主の娘としての一片の誇りも残されず、与えられた任務を果たせず秘密まで洩らさせられたあげくに粗暴で汚らわしい下男のなぐさみものとされる、汚辱の初夜だけが待っているのだった。
[ 4-2 ]
赤猫亭に集まったジャンやピコらの一味はマルグリットからの連絡がないことに不安を募らせながら、更けていく夜の中で決起を目前に控えた重苦しい沈黙におちいっていた。城の動きを気にかけるジャンのもとに、黒魔術の塔から煙りが上がっていることが見張りの者から知らされる。かねてピカールと示し合わせていた秘密の連絡手段であったその煙は、計画の露見と危急とを告げるとともに、ジャンたちには解読不能な紫色の煙をも伴っていた。マルグリットの捕縛を確信したジャンはただちに決断を下し、シャラン襲撃の兵を遣わす。デスノス城から闇夜にまぎれて発したシャラン領主と思しき一行の姿を察知した一揆軍は、シャラン街道をひた走る一隊が森を抜けたところで襲いかかり、急襲に動転する兵士たちを包囲し壊滅させる。シャラン襲撃成功の報を受けて緒戦の勝利に満足するジャンのもとに、町はずれの洞窟に棲む病者たちが現れ、意外にもピカールからの伝言をもたらした。城から立ち昇る紫色の煙はピカールから病者たちへの連絡手段だったのだ。一揆の計画を知って急ぎ領地へと戻っていく領主たちがデスノス城に置き去りにしていった女たちを下げ渡すため、病者の一団が城内に呼び込まれようとしていた。ピカールの真意を悟ったジャンは部下たちとともに病者に変装し、城に入り込む千載一遇の機会を抜け目なく利用する。伝染病者の一行をおそるおそる裏門から招き入れたデスノス城の番兵たちはたちまち倒され、一揆軍はジャンの手引きで次々と城内に侵入していった。牢番たちが捕らわれの女たちを好きずきに辱めている地下牢に乗り込んだジャンは、油断しきっていた牢番たちを切り捨て、囚われていたファビオを救い出す。ジャンとファビオがブロン侯爵への報復を競い合いつつ、ピカールとラミアの姿を探しに向かおうとしたとき、城の厩からは火の手があがっていた。
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厩の火事を引き起こしたのはマルグリットであった。拷問室から引き出された後ピエールによって厩で凌辱されたマルグリットは、一揆軍が突入した頃、汚された肉体に残る汚辱の名残をおぞましく感じながら、両手を上に伸ばして柱にくくりつけられた裸体を藁の上に転がされて虚ろな思いに捉えられていた。秘密を洩らしたうえに処女の身を賤しい下男に汚されて生き抜く誇りを失ったマルグリットは城もろともおのが身を焼き滅ぼすことを願い、台の上にゆらめく蝋燭を藁の上に蹴落とす。隣で目覚めてはね起きたピエールに固くしがみついて道連れにしつつ、マルグリットの意識は遠のいていく。いっぽう、城内を次々と制圧した一揆軍は、大広間で衛兵頭ゴタールに行く手を阻止されて苦戦していた。ジャンに救い出されて愛剣を取りもどしたファビオが進み出てゴタールに打ちかかり、激しい斬り合いの末に巨漢の衛兵頭を打ち倒したことで、戦いの形勢は完全に決まった。
この期に及んでもブロン侯爵の寝室では、ブランシュ姫が、昼から続いた幾多の責め苦の総仕上げであるかのように、侯爵とフォラスによって責められていた。貞操帯ひとつの裸身を四つん這いに床に這わされた姫は、そのか弱い背にフォラスをまたがらせて、牝馬さながらに追いたてられて這いずりまわらされる。首輪についた手綱を引き絞られて涙に濡れる美貌を仰向かされ、下向きに垂れた乳ぶさを揺らし、侯爵の鞭で打ちたたかれた尻に赤い鞭痕を刻みながら、悲痛な悲鳴と哀訴を絞って這いまわるブランシュ姫。駆けつけてきた配下から急を告げられ、思いもかけぬ敗北と破滅に激昂する侯爵。主を見捨てて逃げ出そうとしたフォラスを怒りに任せて叩き切った侯爵のもとに、ファビオが現れる。激しい斬り合いのさなか、ファビオの背後に忍び寄った衛兵が繰り出した剣は、あやうく身をかわしたファビオを逸れて侯爵を貫く。同時に駆けつけたジャンが衛兵を切り捨て、死に瀕した侯爵に積年の恨みを告げつつとどめを刺した。戦いは果てたが、シーツに身を包んで泣き伏すブランシュ姫のかたわらで、ファビオは慰めの言葉もなく立ち尽くすしかなかった。
【十二月】一か月後、ピエモンテを目指してドーフィネの山中を越してゆく騎馬の一行は、名医ピカールと娘のラミアを伴ったブランシュ姫とファビオ、クレリアたちであった。ブロン侯爵は滅びプレラチも処刑されて、正統の領主ジャンの治世が回復しても、デスノス城で悪夢の刻を過ごした女たちの心には深い傷痕が刻まれていた。愛しい恋人の前に惨めな奴隷姿を曝して姫の威厳を失ったブランシュ、城中で使われた淫らな香によって女の官能を目覚めさせられ疼く肉体を持てあますクレリヤ、そして貞操帯を嵌められた全裸の姫の姿を脳裏から追い払えないファビオ。ただ一人の処女であるラミアは報われることのないファビオへの想いを胸に苦しみ、ピカールことフラメルは、マルグリットの死を知って以来暴君へと変じたジャンの圧政のさまを思って心を痛める。一行が進む道々には、かつての領主たちの妻や娘が素っ裸に剥かれて辻に曝され、農夫たちのいたぶりを受けて泣き叫ぶのを放置されているのだった。憂いを胸に歩みを進める一行の行く手には、冬を迎えたアルプスの美しい山々が神々しい姿でそびえ立っていた。
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