姫が震える指で指し示す方に眼をやったクレリヤは、恐怖のために肌がそそけ立った。
【14XX年10月31日】大飢饉に見舞われた十五世紀フランスのある秋の夜、ドーフィネ地方の深い森の中を二人の旅の女が彷徨っていた。イタリアはピエモンテの領主アスカミオ・ド・モンフェラ公爵の娘であるブランシュ姫は、はるか異国フランスを旅するさなか、森の抜け道を探しに行った家臣ファビオ・デル・ドンゴとはぐれ、ファビオの妹でもある侍女のクレリアとともに行き暮れてしまったのだ。先般、父の病の平癒を願ってアヴィニョンに巡礼に訪れた姫は、ドーフィネ地方デスノスの町に滞留しているという名医マチュラン・ピカールの話をさる修道僧から聞き、ピカールをピエモンテに迎えるためにデスノスに向かう途上であった。月に照らされる深い森の中、飛び交う蝙蝠の大群に怯えながら馬を進めていたブランシュとクレリヤは、森の奥から聞こえる祭のような楽の音に不安をつのらせた時、乗っていた馬たちに逃げられてしまう。木立の中に不気味な灯りを見出して近づいた二人は、乱れた服装に髪を振り乱した女たちが蝋燭を手にして彼方へ消えてゆくのを目撃する。万聖節を明日に控えて悪魔の宴(サバト)が催されていることを察した二人は、身を寄せ合ってうずくまりおののき慄える。どれほどかの後、ふいに近づいてきた山羊面の騎馬の一団が身を縮めている二人を見出し、恐怖のあまり気を失った旅の女たちをさらって駆け去った。
縄にくびられた乳房がしらじらと浮き出た。
衝撃と恐怖のあまり茫然となってあらがう気力もないブランシュの裸体を乗せたまま、黒人奴隷たちの担ぐ浴槽は黒魔術の塔の最上階の部屋へと運び上げられた。黒衣をまとったプレラチに迎えられ、恐ろしい儀式の道具に取り囲まれた暗い部屋の中央に浴槽を降ろされたブランシュは、タオルでわずかに隠れた裸に鳥肌を立ててわななきながら無言の僧を問い詰めののしる。暗がりから姿を現した侯爵を眼にして憤りを噴出させたブランシュだが、激しい非難と抗議を不遜な冷笑であしらわれ男たちの冷酷な視線に射すくめられて、貴族の娘の誇りをくじかれていく。けがらわしい黒ミサの生贄にされると知って慄えるブランシュの傍には猿轡をされた侍女のクレリヤが椅子に縛られて据えられ、あるじの姫が純潔を穢されるのを見せつけるよう仕立てられていた。幾重もの辱めを前にして絶望にすすり泣くブランシュは、侯爵の命令を受けた四人の黒人奴隷にタオルをむしり取られ、浴槽から担ぎ上げられた裸体を祭壇の生贄台に仰向けに転がされ縛りつけられていく。泣き叫んで抵抗する処女のか弱い両手と両足が容赦なく引き伸ばされ拡げられ、いましめの縄を食い込まされて、ほのめく灯火の中に白く美しい生贄の裸体をさらけ出した。黒人奴隷を下がらせた後でプレラチは儀式の準備にかかり、黒い死蝋の蝋燭を燭台代わりに生贄の肌の上に立てていく。慄える双の乳首、くぼんだ腹、わななく両脚に蝋燭を立てられて肉の燭台と化した姫は、苦悶の身悶えにつれて滴る熱蝋に肌を灼かれて悲鳴を噴きこぼす。だが、明かりを消された室内に妖しく浮かび上がるブランシュの裸体を囲んでまさに黒ミサが始まろうとした時、思いもかけぬ発見を告げるために駆け込んできたフォラスが儀式を中断する。ブランシュを連れ去らせたあと姫が脱ぎ残した下着の間をまさぐっていたフォラスは、アヴィニョンの修道僧から名医ピカールに宛てて姫に託された極秘の手紙を、姫の守り袋の中から見出したのであった。マチュラン・ピカールが変名だと露見しつつあることに注意を促すその手紙は、ピカールの正体が、「賢者の石」の秘密をただ一人解き明かしたと噂され、今は身を隠して慈善のために全国を遍歴している高名な錬金術師ニコラ・フラメルであることを告げていた。思いがけぬ巡り合わせに狂喜した侯爵は、失神寸前のブランシュの頬を張り飛ばして手紙を預かったいきさつを聞き出し、翌日にもピカールを城に召し出すための策をプレラチとともに練る。もはや黒ミサの必要がなくなったいま、大の字の裸体をさらけ出している美しい姫の立場は、サタンへの生贄から淫虐な侯爵の花嫁へと変わった。いましめを解かれて再び後ろ手に縛られていくブランシュは悲痛に哀願しながら、花嫁として素っ裸を家臣たちの曝しものにされたあと一晩中侯爵のなぶりものにされることを告げられ、身を揉んで泣きじゃくる体を引きたてられていく。椅子に縛られたまま部屋に残されたクレリヤにはプレラチが歩み寄り、無念に忍び泣く侍女の美貌を覗き込む。荒々しく胸元を引き裂かれ、縄目の間に剥き出しにされた乳ぶさにおぞましい愛撫を這わされていきながら、可憐な侍女もまた汚辱の夜を迎えようとしていた。
ほっそりした腰に装着させられているいまわしい貞操帯が、クレリヤの屈辱的な運命を物語っている。
傷の手当てをして朝食を済ませた侯爵は、前夜の晩餐に同席した七人の女奴隷を伴って城の地下にある拷問室に降りる。かつては侯爵に攻め滅ぼされた敵国の姫だった女奴隷たちは、それぞれ最初にそこに連れ込まれて責められ、侯爵の膝下に這いつくばって屈服したいまわしい屈辱の記憶を呼び覚まされておののく。地下牢に接する広い地下拷問室は、侯爵の嗜好にかなうべく、拷問台・車輪・X字架・木馬・枷・鎖にはじまるありとあらゆる責め具を備えられていた。一メートル四方に満たない小さな鉄の箱が女たちの前で開けられると、黒い革紐で窮屈な後ろ手あぐら縛りにされ、白い裸体を縦横に締め上げられて一個の肉塊と化したブランシュ姫が転がり出てくる。窮屈な箱詰めにされたまま処罰の時を待たされていたブランシュは、侯爵に足蹴にされ、全身から苦悶のあぶら汗を絞り出しつつ革紐をきしませて呻き喘ぐ。新入りの女の無惨な姿の周囲に呼び寄せられておそろしげに見降ろす七人の女奴隷は、一人ずつ名指しされて、自分が受けた責め苦のなかで最もつらい責めを問いただされる。女たちはかつて皆、戦勝に酔う兵士たちの間を全裸で引き回され、木馬に乗せられ、吊られ、くすぐられ、女の羞恥と誇りを無惨に引き裂かれて侯爵に屈服した者たちばかりなのだ。侯爵の命令でいましめを解かれたブランシュは、一メートルほどの鉄棒の両端に手首を結びつけられ、天井から垂れる鉤で吊り上げられていく。あらがう気力もなく観念の眼を閉じたブランシュの華奢な体が宙吊りに引き伸ばされ、両手に全体重をかけつつ床を離れてぶら下がる。頭をのけぞらせ爪先を痙攣させて苦悶するブランシュは、はかない悲鳴と抵抗を無視して宙に浮いた両足首をも鉄棒の両端にくくりつけられ、あさましいX字の吊り姿を一同の前にさらけ出して、すすり泣きながら美しい裸体を宙に伸びきらせる。自分を傷つけた憎い女の無惨な全裸宙吊りを臨んで腰を降ろした侯爵は、女奴隷たちに羽根や刷毛を受け取らせ、目の高さに白い腹をさらけ出している生贄の肉を一斉にくすぐらせる。女の体の急所を知り尽くした狡猾ないたぶりを、脇腹に、臍に、腰に、足の裏に、寄ってたかって這わされて、泣き笑いに似た絶叫を迸らせながら総身を痙攣させて宙に跳ねまわるブランシュの裸体。取り囲む女たちの頭上で身悶えるブランシュの上半身は、乱れ髪を振りたて、あぶら汗を噴き、尖った乳首を慄わせつつ、悲鳴を絶息するような喘ぎに変えていく。光を失ってとめどなく哀願の涙を流すブランシュの弱りぶりに屈服を認め、侯爵が姫の体を吊りから降ろさせようとするのを、駆け込んできたフォラスが未練がましく引き止め、さらにフォラスに呼びにやらせていたプレラチが、全裸を後ろ手に縛られ腰に貞操帯を嵌められたクレリヤの縄尻を引いて現れる。屈辱の運命もあらわな互いの裸身を目の当たりにし、残酷な主従再会に激しく泣き交わす姫と侍女。だが、フォラスは慟哭する主従の悲嘆のさまを嘲笑うようにブランシュの足首に張り渡された鉄棒に腰を掛け、姫の号泣を、手首に食い込むすさまじい重さに耐えかねての絶叫へと変える。縄の食い込んだ手首から血を流しあぶら汗を噴いた全身を痙攣させて許しを乞う姫の苦しみを意にも介さず、鉄棒に腰掛けた小人は頭上をまたぐように拡げられた女の脚につかまって、白い肉をブランコのように乗りこなす。嘲るようなフォラスの小唄に、ブランシュの悲痛な呻きと鎖のきしみが交錯する凄惨な拷問図絵。あまりの酷さに飛び出そうとしたクレリヤはプレラチに縄尻を引かれて転がされ、乳ぶさに鞭を振り下ろされる。失神寸前の苦痛に弱々しく喘ぐばかりとなった姫の体が侯爵の命令でようやく降ろされ、床に伸びきった体が仰向けに転がされる。侯爵の足に服従の口づけを命じられたブランシュはボロボロの体を起こして侯爵の足元に跪き、ひそやかな嗚咽を洩らしつつ、侯爵の革長靴を抱き締めて唇を押しつける。ピエモンテ領主ド・モンフェラ公の娘、気丈で美しかった十八歳のブランシュ姫は、いま拷問室の床に全裸を這いつくばらせ、侍女や下劣な男たちが見守るなか、自分の処女を奪った、殺そうとまで憎んだ男に服従を誓わされたのだ。完全に屈服を遂げた女をさらに辱めようとする侯爵によって貞操帯の装着が命じられると、黒人奴隷に引きずり起こされた姫は泣き叫び哀願しながら、つい昨日は処女の嫌悪をもって顔をそむけたあさましい鉄の装具を、剥き出しの我が身に装着されていく。後ろ手の手枷、鎖で短く繋がれた足枷、首輪までもつけられ、首輪から伸びる鎖の端を黒人の手に握られて立たされたブランシュの姿は、すでに気位の高い貴族の娘ではなく、白い肉の奴隷へと変わり果てていた。奴隷の調教のためブランシュとクレリヤの身がフォラスの手に預けられた時、折しも遣わされていた使者が戻り、医師ピカールを同行したことを告げる。遠国まではるばる訪ねてきた目当ての人物の名をここで聞いても、もはやブランシュには為すすべもなく、足鎖を引きずりながら、クレリヤとともに裸身を引き立てられていくことしかできないのだった。