赤猫亭では名医の治療を受けて快癒に向かいつつあるファビオが、看護にあたるラミアと笑い交わしていた。元気を取りもどして軽口をたたく青年をまぶしげに仰ぎ、ブランシュ姫に寄せるファビオの想いを敏感に感じ取りながら、ラミアは自分の胸中に芽生えた初めての恋を健気にも隠し通す。折しも城に呼び出された父からの使いと称してラミアを迎えに遣わされてきた役人たちのものものしさに、赤猫亭の主人ピコは警戒を抱く。強引に部屋に踏み込んできた隊長の粗暴な言動からファビオは事態の急変を悟り、ラミアを守るために剣を抜く。はやり立って襲いかかる兵士を次々と切り捨てて奮闘するファビオだが、背後から回り込んだ捕手にラミアを人質にとられてあえなく投降する。ファビオとラミアは互いの目をいたましげに見つめ合いながら、役人たちの不作法な手で荒縄をかけられていった。
ピカールが捕らわれたことを妹の伝書鳩で知らされたジャンが赤猫亭に駆けつけたときには、ファビオもラミアも連れ去られた後であった。無念を言いつのるピコと領民たちから事の次第を聞き出したジャンは、ピカールの正体を知らないがゆえに侯爵の企みを計りかねつつも、予定された蜂起の時を明朝八時、攻撃対象を近郊の城シャランに変更して、あわただしく決起の準備にとりかかる。