城主の病気を告げる城からの使者に連れられ城内の一室に案内されていた医師ピカールは、贅沢な調度に囲まれた室内で延々と待たされながら、その口実に疑念をつのらせていた。やがてプレラチを伴って現れた侯爵の興奮冷めやらず病気のそぶりもない様子に対して、皮肉を含んだ難詰を向けるピカール。悪びれもせずに嘘を認めた侯爵は、大学者ニコラ・フラメルを召し出すという真意を明かし、とぼけようとするピカールに修道僧からの手紙を突きつける。内心動揺しつつも自分の正体を認めたピカールは、私信を開封した侯爵の不作法を責め、手紙をもたらした使者に会えないと知って直ちに立ち去ろうとする。領主への恐れのかけらもない尊大な振るまいに激怒しながらも医師を引き止める侯爵。領内の住民の困窮を救うために錬金術の秘密が必要だと言い向けられたフラメルは激しく憤り、普段から領民を苦しめるばかりの侯爵の暴政を厳しく糾弾する。激昂して抑制をかなぐり捨てた侯爵はフラメルの美しい娘に破廉恥な拷問を加えるとほのめかして責めたてるが、大学者の固い信念と信仰を曲げることはできなかった。昂然と頭を起こして怯むことのないフラメルを地下牢へ連れ去らせながら、侯爵はラミアを捕らえさせる命令を聞こえよがしに発する。このとき、女中として城内に潜んでいたマルグリットが地下牢へ連れ去られるフラメルを目撃し、兄のジャンに急を告げる伝書を放つ。