デスノス城ではブランシュが城主の居間に迎えられ、これまでの旅のいきさつをブロン侯爵に話していた。拉致同然にして城に連れ込まれたものの、その後に手厚いもてなしを受けたことでいささか警戒をゆるめていたブランシュだったが、年齢や貞操まで聞き出そうとする城主侯爵の好色でぶしつけな質問に当惑し、憤りの色を隠せない。行方不明のファビオを捜索し医師ピカールも城に呼び出すと約束する侯爵の強引さに負けて、城への逗留を承諾したブランシュは、貴族の娘の誇りなど実際は意にも介さない邪悪な侯爵によって、十八歳の処女の身が黒ミサの生贄として値踏みされているなど思いもよらないのだった。
生贄に定めた姫の純潔に確信を抱いた侯爵は、旅の一行の行方が途絶えても手がかりが残らないことを確かめてプレラチとともに満悦し、騎士ファビオに捜索と暗殺の手を差し向ける。他方、デスノスに滞留して病人たちに慈善で施療していると評判の名医ピカールに対しては、錬金術の心得がまったくないと知って興味を失う。当夜に再度の黒ミサを期した侯爵は、気位の高い姫が全裸で祭壇に縛りつけられたときの悲嘆を思って胸躍らせながら、昨夜下げ渡されたマリヤを拷問室に連れ込んで責め苛んでいるフォラスの見物に向かう。姫の侍女クレリヤは主人の生贄の儀式に立ち会わされたうえ、首尾良く秘密を手に入れた暁にはプレラチに与えられることが約束された。