デスノス城の地下牢に囚われたファビオは、足枷を牢の床の鉄輪につながれて閉じ込められた絶望的な状況のもとにありながら、なおもブランシュ姫とクレリヤを救い出すことに望みを巡らせていた。二人の黒人の牢番が現れてファビオに手枷をかけ、牢から引き出して大広間へと曳いていくと、明るいシャンデリヤに照らされた広間には城主のブロン侯爵と十数人の家臣たちが、傍らに女を侍らせて豪勢で淫らな饗宴に打ち興じていた。ファビオの登場で静まりかえった宴席の城主のそばの主賓席には、ピカールとラミアが事の成り行きを不安げに見守る。黒人奴隷に左右から動きを押さえられ、姫と妹の姿がその場にないことを見て取って失望するファビオ。ブロン侯爵はファビオの勇猛さを誉めそやしてみせつつ、宴席の余興に剣技での決闘を演じて見せるよう家臣たちをあおりたてる。残酷な座興に不安をつのらせるラミアを気づかいつつ、ファビオは侯爵と家臣たちを挑発する。ファビオを倒した者に、つい前夜に全裸のお披露目をさせられた姫を与えると侯爵が約すして家臣たちの興奮を巻き起こすと、その喧噪のなか、侯爵の背後の扉からフォラスに曳かれてブランシュ姫が連れ込まれる。全裸の体に後ろ手の手枷と鎖のついた足枷を課され、腰に固く食い込んだ貞操帯と鋲を打った黒革の首輪だけをまとわされて、首輪の鎖を犬のように曳かれながらよろめき歩くという、女として見るも浅ましい奴隷の姿を曝しながら、引きずられるようにして侯爵の背後のひときわ高い台上に立たされ、満座の視線を浴びせられるブランシュ。金髪の頭を深々とうなだれ、羞恥でうなじまで染めて丸い肩先を小刻みに慄わせている均斉のとれた白い裸は、つい先夜の処女としての激しい抵抗の名残もなく、苛烈な辱めの前に貴族の娘はおろか女の誇りまで完全に明け渡した痛ましい屈服の姿にほかならなかった。がっくりと顔を伏せた姫の金髪を小人が背後から掴んで引っ張り下ろし、恥辱に固く眼を閉じた美貌を仰向けにさらけ出すと、それが愛するブランシュ姫と見知ったファビオは激昂の絶叫を噴き上げ、愛する恋人の姿を認めた奴隷姿の姫は絶句して気を失う。ブロン侯爵は無惨な主従再会の愁嘆場を嘲笑いながら、クレリヤもが家臣に与えられたことを告げてファビオの怒りを煽りたてる。ブランシュ姫の美しい肉体に魅惑されて名乗りを上げた家臣たちとの決闘が、槍を構えて居並んだ兵士たちに囲まれた広間の中央で始まる。失神から目覚めさせられて柱に立ち縛りにされ、フォラスに短剣を擬せられたまま、感情を失った瞳を見開いて恐ろしい座興を見せつけられるブランシュ姫。だが、枷をはずされて愛剣を渡されたファビオは左脚の怪我をものともせず、イタリアでも名高い剣技を発揮して武骨なフランスの武士を二人たてつづけに屠り去る。家臣たちの重苦しいどよめきを受けつつ、姫を救い出す算段にファビオが思いを巡らせているとき、決闘を見守るフラメルとラミアの隣では、城内で密偵の女を捕らえたとの報告がブロン侯爵のもとにもたらされる。興味をそそられた侯爵は決闘を中止させ、なおも意気軒昂なファビオを適当にあしらって広間を後にする。侯爵に続いてフォラスに引かれていくブランシュ姫のうなだれた姿に励ましの声をかけ、フラメルとラミアを力づけながら、ファビオは再び枷を課されて地下牢へ連れ戻されていく。それを見送るフラメルは、頼みのマルグリットが捕らわれたことを覚って、残された手だてに必死で考えを巡らせていた。