綾子が仲居として働いている旅館に宿を取った私は、五十を控えながら若々しさをとどめた綾子の姿に打たれ、少年時代の回想を誘われる。
敗戦の年、都会のS市から私の家に家族とともに疎開してきた年下の少女が綾子であった。不安で閉塞的な世情のさなか、一つ屋根の下で垢抜けた都会の少女と同居しながら、中学生の私は目覚め始めた思春期の性の衝動をもてあましていた。綾子の母が不在のある夜半、私は衝かれたように綾子に襲いかかり、納戸に引きずり込んで手籠めにする。手拭いで猿轡を噛ませ手首を後ろ手に縛って仰向けに転がした少女の、柔らかく細っこい体を掴みしめ揉みくちゃにしていく私。ブラウスから引きずり出した乳ぶさにむしゃぶりつき、激しく抵抗する体からモンペとズロースを脱がした私は、暗闇の中でおののく綾子の性器を恍惚となってまさぐる。少年は猛る怒張を少女の腰に割り込ませ、処女の体を強引に引き裂いていく。破瓜を遂げたか弱い裸身を電灯の下にさらけ出されて必死に羞じらう綾子の姿を、征服者として見降ろす私の胸中には、土蔵にこもって読みふけった大衆小説によって養われた嗜虐の血が目覚めはじめていた。私はすすり泣く少女を明かりの下で再び犯し、苦痛に痙攣する稚い女体の奥に蒼い性のしぶきを注ぎ込んだ。
その後の数度の夜這いを最後にして私と綾子との情交は途絶え、敗戦後まもなく高校生となって町を離れた私は、数年後、綾子が兄と結婚したことを知って自棄に陥る。私が東京の大学に進んで綾子を忘れかけていたころ、綾子は夫を病で亡くし二十歳前にして未亡人となったのだった。