気分転換のために取ったQホテルの一室で千種忠平が暇をもてあましているところに、さきの講演を聴いたという女からの電話が入る。プライベートでの面会を懇願するその女・河野希世子の願いを容れて、忠平はあらぬ妄想を膨らませつつ自室に希世子を迎え入れる。ヴェールをつけ喪服に身を包んだ三十代の美女は、忠平が作中で描く美貌の未亡人さながらの美しさであった。忠平のもてなしにくつろいだ希世子は、促されるまま夫と別居中の身の上を告白し、秘めてきた悩みを忠平に打ち明ける。敬虔なクリスチャンとして育てられてきた希世子は、少女時代から、宣教師に聞かされる殉教者たちの受難の物語に性的な興奮を抑えきれず、SMプレイへの淫靡な妄想を秘め隠して生きてきたのだった。おのが罪深い肉欲への背徳感に苛まれる希世子に対して、忠平はSMプレイの実践をもちかける。隠してきた欲望を突き止められ、拒む気力もなく羞じらう希世子の前に、忠平は携帯している責め具を持ち出してくる。