その夜、林家では、静子夫人がやるせない思いを抱えてひとり家にこもっていた。夫の連夜に及ぶ情事に胸を痛めるいっぽう、非行に走った先妻の子たちに対しても継母としての引け目から強く出ることができずにいた夫人は、誰の助けを得る当てもなく孤独を深める。八時半を過ぎて林家を訪れた男が、達也が事故に逢ったことを告げて夫人の不安を現実のものとした。知らせに来た黒人の男の異形の姿にひるみながらも赤いスポーツカーに乗り込んだ夫人は、車が山の中へ向かうころになってようやく怪しみ出す。行き先を問い質す静子夫人の前で太郎は正体を現し、達也としのぶに対するリンチの巻き添えとして母親の静子までもが拉致されたことを明かす。後ろ手錠にされ眼隠しをされた静子は、兄妹が凄惨な凌辱を受けている但馬邸の地下蔵へと連れ込まれていく。