千秋を探して月夜の裏庭にさまよい出た圭吾は、裏手の墓地にある大野木家代々の墓に行き当たって、無念の死を遂げた父のことを回想する。中学校の校長だった兄妹の父は、千秋の離縁と発狂に落胆するのと時期を同じくして、学校で起こった生徒の事故死の責任を取らされて辞職した。失意のうちに世を去った父の無念こそは、この土地の教育界に対する圭吾の深い怨念の源泉だったのだ。墓地のある慈恩寺の境内に入り込んだ圭吾の姿に気づいた和尚の光覚は、千秋を保護していることを告げて圭吾を庫裡に招き入れる。長襦袢一枚のしどけない姿で人目もはばからずに兄にまとわりつき、亡き父を見たと訴える狂女の妹。庫裡の中には、和尚のほかに父と年格好の似た老人が座を構え、和尚の妻の奈美が湯文字一枚の裸身を床柱に十文字に磔にされて羞じらいに悶えていた。千秋に父のように懐かれている但馬と名乗る老人は、千秋の口から聞かされた兄妹の境遇に同情を示して、光覚和尚とともに設けていた淫らな酒宴に飛び入りの兄妹を招き入れる。和尚は磔にされた奈美を圭吾の眼前に曝しあげ、三十代半ばの熟れた裸身をなぶりあげる。但馬老人にけしかけられた千秋は羞じらい悶える奈美にまとわりついて乳首を吸いたて、淫らな愉悦に崩れる女体から湯文字をほどき去って全裸をさらけ出させる。理性の箍もはずれたまま兄妹の秘密を口走るのに狼狽する圭吾の前で、千秋は老人に促されるままみずからも全裸を曝して奈美と並べ立てる。圭吾はあまりの淫らな光景に耐えきれなくなって、強いて千秋に長襦袢を着せてその場を辞する。無邪気な千秋から母親のように慕われて名残を惜しまれた奈美は、眼を涙にけぶらせつつ千秋の口づけを受け入れる。